東京地方裁判所 昭和29年(ワ)1040号 判決
第一銀行
永代信用組合
被告永代信用組合は、その足立支店長であつた安島富治が原告主張の手形用紙の表面の引受欄に「永代信用組合足立支店、支店長安島富治」なる記名捺印をしたことを認めて、かような記名捺印は手形法第三十一条第三項にいわゆる単なる署名には該当しないと主張するからその当否について按ずるに、右規定は「為替手形ノ表面ニ為シタル単ナル署名ハ之ヲ保証ト看做ス但シ支払人又ハ振出人ノ署名ハ此ノ限ニ在ラス」と宣言しているだけであつて、そのいわゆる単なる署名から引受欄における署名を除外する旨を言明してはいない。而して他に引受欄における署名はすべてこれを引受のための署名としなければならないという合理的理由を発見することはできないから、引受欄における支払人又は振出人以外の者の単なる署名は前記規定にいわゆる単なる署名に該当するものと解するのが相当である。被告組合の主張は結局支払人以外の者の引受欄における署名は無効であるというに帰すべきであるが、かような見解は手形の署名者に遁辞を与えて取引の安全を害する結果を招くものであつて採用できない。従つて右記名捺印は手形保証の形式としては何ら欠けるところはないものといわなければならない。
次に、被告組合は他人のために手形保証をする能力を有するものであるか否かについて按ずるのに、被告組合が中小企業等協同組合法によつて設立されているものであることは原告も明らかに争わないからその自白があつたものとみなすべきであるが、右協同組合法は第九条の八において信用組合の事業を規定し、組合のなし得る一般の債務負担行為としてはこれを組合員及び組合員と生計を一にする配偶者その他の親族の預金又は定期積金の受入に限定しているから、被告組合が一般の手形保証をすることはその目的の範囲外の行為というべく、従つて右記名捺印は、これをなした安島富治の権限を詮議するまでもなく被告組合の行為としては無効といわなければならないとして、これを棄却した。